母と娘
2004年3月24日ウチの会社は雑居ビル。
狭い建坪だが、小さな会社が多い。
上の階に、子供のタレント事務所みたいなのがあるのは
前から知っていたが、学校や幼稚園が休みになると
オーデションみたいなのがあるのか、子連れの母をよく見かける。
午後3時頃。
女の子の泣き叫ぶ声がビル内に響く。
時々兄弟姉妹が階段で遊んでいることがあるので、
そんな声かしら、と思っていたら、
明らかに大人の女性が罵倒するようなスッゴイ声が。
ドアを開けて廊下に出てみるが、姿はない。
その代わり、
「どうしてっ! 名前が言えないのっ!」
「それくらいできるでしょっ!」
もう完璧に母親の声。
(文字だと平板に見えるけど、実際はめちゃ怖かった)
それと同時に女の子の泣き叫ぶ声。
階上から聞こえてくるような気がしたので、
郵便物を取るつもりで階下のポストへ出て、
もう一度ウチの事務所前で耳をすますと、
どうやら、同じ階から聞こえてくるよう。
一向に女の子の泣き声と母親の叱り声は止まない。
それにしてもヒステリー状態の度が過ぎている。
それは同じ階にある共同トイレから聞こえていた。
他の会社の人は出てきていなかったが、あんまりひどいので
トイレに入ろうとノックをしたら、その母親はあろうことか
中から「ちょっと、今、スミマセン」と慌てながらドアを押さえていた。
私は力任せにドアを開け、
「叱られるのは勝手かもしれないけど、こんなに声を荒げて叱られてはあまりにひどいんじゃありませんか? かわいそうに。声が響いています。何事かと思いますし他の人に迷惑もかかります。よく考えて下さい」
とそれだけ言うのが精一杯だった。
見れば4歳くらいのかわいい女の子が泣きじゃくっている。
母親は真っ青な顔をして、逆切れ寸前で「分かりました!」と
開き直って言った。
たぶん、オーデションらしき面接で、自分の名前がいえなかったり
母が思うように娘はできなかったのだろう。
それにしても、情けない。
私は子をもっていないが、同性としてショックだったし
母性が過ぎれば理性をも失わせるのか、と落胆するほかなく、
「虐待」という言葉すらしばし頭の中から消えはしなかった。
二人とも笑えばかなりの美人だろう。
娘は泣き顔でもかなり愛らしい。
愛すればこそ、なんだろうか。
何かが狂っている。何かが変だ。
皮肉にも、今夜TVで松本清張のドラマ『鬼畜』が放映される。
狭い建坪だが、小さな会社が多い。
上の階に、子供のタレント事務所みたいなのがあるのは
前から知っていたが、学校や幼稚園が休みになると
オーデションみたいなのがあるのか、子連れの母をよく見かける。
午後3時頃。
女の子の泣き叫ぶ声がビル内に響く。
時々兄弟姉妹が階段で遊んでいることがあるので、
そんな声かしら、と思っていたら、
明らかに大人の女性が罵倒するようなスッゴイ声が。
ドアを開けて廊下に出てみるが、姿はない。
その代わり、
「どうしてっ! 名前が言えないのっ!」
「それくらいできるでしょっ!」
もう完璧に母親の声。
(文字だと平板に見えるけど、実際はめちゃ怖かった)
それと同時に女の子の泣き叫ぶ声。
階上から聞こえてくるような気がしたので、
郵便物を取るつもりで階下のポストへ出て、
もう一度ウチの事務所前で耳をすますと、
どうやら、同じ階から聞こえてくるよう。
一向に女の子の泣き声と母親の叱り声は止まない。
それにしてもヒステリー状態の度が過ぎている。
それは同じ階にある共同トイレから聞こえていた。
他の会社の人は出てきていなかったが、あんまりひどいので
トイレに入ろうとノックをしたら、その母親はあろうことか
中から「ちょっと、今、スミマセン」と慌てながらドアを押さえていた。
私は力任せにドアを開け、
「叱られるのは勝手かもしれないけど、こんなに声を荒げて叱られてはあまりにひどいんじゃありませんか? かわいそうに。声が響いています。何事かと思いますし他の人に迷惑もかかります。よく考えて下さい」
とそれだけ言うのが精一杯だった。
見れば4歳くらいのかわいい女の子が泣きじゃくっている。
母親は真っ青な顔をして、逆切れ寸前で「分かりました!」と
開き直って言った。
たぶん、オーデションらしき面接で、自分の名前がいえなかったり
母が思うように娘はできなかったのだろう。
それにしても、情けない。
私は子をもっていないが、同性としてショックだったし
母性が過ぎれば理性をも失わせるのか、と落胆するほかなく、
「虐待」という言葉すらしばし頭の中から消えはしなかった。
二人とも笑えばかなりの美人だろう。
娘は泣き顔でもかなり愛らしい。
愛すればこそ、なんだろうか。
何かが狂っている。何かが変だ。
皮肉にも、今夜TVで松本清張のドラマ『鬼畜』が放映される。
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