客呼ぶ客

他所に行って、昼食や夕食をとる場合、
最近はその地で食事してお金を落とす。
下戸だし大した額ではないけれども、
当たり外れがあるのもご愛敬、っつーことで。

先週の明日香で。
某食堂に入ったら、正午をとっくに過ぎているのに
我々しか客がいない。
ずいぶん前に訪れた時は行列ができていて
結局入れなかったことがあり、そのリベンジもある。
なんかちょっと拍子抜けしつつも、座って注文。
もう今から他の店を回るのも面倒だ。

食べていると、奥からご主人が出てきて
「お客さん、寒くはないですか～？」と尋ねる。
雨が上がっても曇りの間は蒸していて、今日は寒くなんかない。
そう答えると、
「今日は静かで寒～いんですわ、お客さん来ない」と
ぼやくこと、ぼやくこと。
「お天気のせいじゃない？　これからじゃないの？」と
ぼかした言い方をしたけれども、
「全国の観光客が激減しているからねえ、ここも影響してる」
と、さらにぼやく。そして、理由を断定。

旅を自粛している人もいるにはいるが、ここの桜は見る価値もあるし
前の夜はかなり雨がかなり降ってたので、お天気の様子見もあって
出足が遅いんじゃない？　明日は晴れるって聞いたし、人も多いと思う。
なんつって慰めていたら、数グループが続々と入って来て
応対にてんてこ舞いとなってしまった。

―――丸一日ボウズってこたあないやろ―――
そう思いつつお会計に立ったら、ご主人が出てきた。
「お客さん、入って来られたやないですかー、
　私ら（お客さん）呼びました？」
と冗談めかして言ったら、
「福の神さま！」とペコペコ頭を下げて飴玉二つ下さった。

最近あまりこういう現象は起きなかったのだが、娘時代には多かった。
タイミングの問題だとは思うんだけども、飛び込んでドア開けて入ったら
ガラガラで、注文終えた時分には席が埋まってたということも
結構な回数あったと思う。
だからと言って店側に感謝されるわけではないしなあ。

またちょっと運向いてきた？私。
なんて考えながら歩いていたら、晴れてきたりもして。
お天気も持ち直してきて、途中の駅コンビニで買った
やたら重たいビニ傘が邪魔になってしまった。

今週末、件の食堂主人が悲鳴上げるくらい、
明日香村を訪れる人は多いと思う。